相続税の延納

渋谷にある、相続に特化した税理士事務所「ちづる会計」の代表、伊藤です。
当コラムをお読みいただきありがとうございます。
このコラムでは相続に関する情報発信を行っています。
相続にお悩みの皆様のお役に立てば幸いです。
もちろん渋谷区以外の方も、相続でお悩みの際はどうぞお気軽にお問い合わせください。
今回は「相続税の延納」というテーマでお話しさせていただきます。
1. 概要と趣旨
相続税は、原則として現金で一括で納付する必要があります。
しかし、相続税額が一定以上(10万円を超える場合)で納付が困難な際には、申請によって、納付を困難とする金額を限度として、分割(年払い)での納税が認められる制度を「延納」といいます。
その際、原則として、担保の提供が必要になります。また、延納期間中は、延納利子税(利息のようなもの)の納付も求められます。ここでは、延納について取り上げます。
2. 延納の要件
延納を受けるためには、以下のすべての要件を満たす必要があります。
1.相続税額が10万円を超えること。
2.金銭での一括納付が困難であること。
その納付を困難とする金額の範囲内である必要があります。
3.担保の提供。
延納する税額およびその延納利子税に相当する担保が必要ですが、延納税額が100万円以下かつ延納期間が3年以内であれば、担保は不要です。
4.期限内の申請と必要書類の提出。
期限内申請が必要で、「延納申請書」と担保提供に関する書類を税務署長に提出しなければなりません。
なお、延納申請期限は以下の通りです。
- 申告期限内の申告:申告期限
- 更正・決定通知の場合:通知の翌日から1か月以内
- 期限後申告・修正申告の場合:申告書提出日
延納申請書が提出された後、税務署長は原則として申請期限から3か月以内に、許可または却下の判断を行います。
場合によっては、最長6か月まで延長することもあります。
3. 延納に必要となる「担保」の要件
延納する際に提供できる担保は以下の通りです。
- 国債・地方債
- 税務署長が確実と認める社債その他の有価証券
- 土地
- 建物、立木、登記されている船舶など(保険付きのもの)
- 鉄道財団、工場財団など
- 税務署長が認めた保証人による保証
これらが不適当とされた場合、税務署長から担保の変更を求められることもあります。
担保提供関係書類は、延納申請期限までに延納申請書とともに提出が必要ですが、もし担保提供に必要な書類を期限内に提出できない場合、「担保提供関係書類提出期限延長届出書」を提出することで、1回につき最大3か月、最長6か月まで延長が可能です。
4. 延納期間と利子税(延納利子税)
延納が認められた場合の延納期間および利子税の割合は、相続税の課税対象となった財産のうち、不動産等の割合によって決まります。
以下に表形式で整理されています(以下数値は令和5年1月1日現在の延納特例基準割合0.9%に基づく想定の例)。

(出典)国税庁ホームページ:No.4211 相続税の延納
※ ただし、上記の「特例割合」は、各年の「延納特例基準割合」を基に計算され、変更があるとその都度、比率も変動します。実際に申請をするときは所轄の税務署にてご確認ください。
5. 延納が困難になった場合の「特定物納制度」
延納許可を受けた後、やむを得ず延納条件を履行できなくなったときには、申告期限から10年以内であれば、「延納から物納への変更(特定物納)」を申請できます。
この場合でも、物納が完了するまで延納に基づく利子税を納める必要があります。
なお、物納される財産の評価額は、特定物納申請書提出時点の価額が適用されます。
まとめ
相続税は納期限までに金銭で一括納付をするのが原則ですが、納付が難しいときには、延納制度を検討することもできます。
申請の際には、担保提供関係書類の提出をすることなど、専門的な知識も必要なため、専門家に相談することをおすすめします。
今回は「相続税の延納」というテーマでご説明させていただきました。
急な相続や初めての相続でご不安な方はぜひ一度、ちづる会計までご相談ください。
渋谷区以外の方も下記のお問い合わせフォームよりご遠慮なくご相談ください。
この記事を書いた人

- 税理士 伊藤 千鶴
・複数の税理士法人、経済産業省で勤務をした後、独立しました
・中小企業の顧問、個人の相続・確定申告を中心に業務をしています
・福島県生まれ
・子供のころの夢は、小学校の先生でした
・苦手なことは、人前に出ること
・尊敬するひとは、手塚治虫です
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