相続税額の2割加算とは?

1.制度の概要
相続税では、被相続人の一親等の血族および配偶者以外の人が相続や遺贈により財産を取得した場合、
その人の税額に対し2割(20%)に相当する金額を加算する旨が定められています。
これは、法律上の相続関係がない人や関係の薄い親族が相続財産を受け取るのは蓋然性が高く、ある程度負担を重くすることが適当であると考えられたことによります。
また、被相続人の孫が、被相続人の子を越して相続財産を相続すると、相続税の課税を1回免れることができてしまいます。
このようなことを抑制するため、2割加算の規定が設けられています。
参考:国税庁「No.4157 相続税額の2割加算」
2.2割加算が適用されない者(非対象者)
以下の者が財産を取得した場合には、2割加算は適用されません。
- 配偶者
- 一親等の血族(子、父母)
- 養子(ただし、孫養子を除く)
- 代襲相続人(亡くなった子の代わりに相続する孫など)
たとえば、夫が亡くなり、妻と子が財産を相続した場合、2割加算は発生しません。
3.2割加算が適用される者(対象者)
以下のような人が相続または遺贈で財産を取得した場合には、相続税額の2割加算が適用されます。
- 被相続人の兄弟姉妹
- おい・めい
- 孫養子(代襲相続でない場合)
- 内縁の配偶者
- 第三者
実務でよくある2割加算の対象者は、
被相続人の兄弟姉妹、おい・めい、被相続人の遺贈を受けた友人などの第三者が挙げられます。
4.実例で学ぶ2割加算
① 兄とおいが財産を取得したケース
状況:
被相続人Aさんには配偶者も子もおらず、兄のBさんとおいのCさんが相続人です。
Aさんは遺言で、「兄BとおいCに財産を半分ずつ与える」と記載していました。
相続税総額は600万円と仮定します。
按分:
B:相続税300万円
C:相続税300万円
BもCも2割加算の対象者(兄弟、おい)ですので、2割加算をすると、次の税額になります。
- Bの最終税額:300万円 × 1.2 = 360万円
- Cの最終税額:300万円 × 1.2 = 360万円
→ 合計:720万円(当初より120万円増)
② 孫への相続の場合
パターンA:代襲相続の場合
被相続人Aの子が死亡しており、代わりに孫のCが相続するケース。
→ 孫のCは代襲して相続人になっているので、2割加算はされません。
パターンB:遺贈による相続
被相続人Aが生前に「孫Cに財産を与える」と遺言していた場合。
→ 2割加算の対象になります。
5.まとめ
相続税の2割加算制度は、一定の者が財産を取得した場合、その者の税額に20%を上乗せするものです。
制度の理解不足により、思わぬ税負担が発生することもあるため、相続の設計段階から専門家に相談し、加算の影響を考慮した遺言や贈与対策を講じることが極めて重要です。
この記事を書いた人

- 税理士 伊藤 千鶴
・複数の税理士法人、経済産業省で勤務をした後、独立しました
・中小企業の顧問、個人の相続・確定申告を中心に業務をしています
・福島県生まれ
・子供のころの夢は、小学校の先生でした
・苦手なことは、人前に出ること
・尊敬するひとは、手塚治虫です
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